キミさえいれば




黒崎先輩の突然の提案に、私はしばらくの間呆然と立ち尽くしていた。


「でも、先輩の家ってどこなんですか?

大体、道場まではどうやって通ってるんですか?」


「俺? 俺はバスだけど。

ってやばっ!

今、何時?」


「22時半過ぎですけど」


「あぁ、それならまだバスがあるな。

ここからメイン道路って、何分くらい?」


「歩いたら15分くらいでしょうか」


「そうか。じゃあ走って行くよ。

白石、次のバイトいつ?」


「えっと、明日です」


「俺も明日は稽古だから。また明日」


そう言うと先輩は、ものすごい速さで走って行ってしまった。


この辺りは薄暗いから、すぐにその姿は見えなくなってしまった。


なんだか嵐のようだったな……。


それにしても。


どうしてバイトしている事を黙っていてくれるんだろう。


生徒会長なのに……。


ちょっと怖い時もあるけど、実は優しい人だったりするのかな。

 
まだよくわからないけど。


以前最低だって言ってしまったことは、撤回したいななんて。


そんなことを思い始めていた。
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