キミさえいれば
ハッと目を開けると、視界に入ってくる自室の天井。


心臓がうるさいくらいにバクバクして、呼吸もひどく乱れている。


「またあの夢……?」


一体何度見れば、見なくなるのかな。


人生で一番悲しかった、あの日の夢を……。


毎度のことながら、耳と髪と枕が涙で濡れていた。


最悪な寝起きに顔を洗う気さえ失せるけど、時計の針が既に7時半を指していたから。


私は重い身体を引き摺って、台所へと向かった。


洗面台などないこのアパートでは、洗面も歯磨きもこの流し台が大活躍。


顔を洗ってタオルで水滴を拭うと、目の前の小さな鏡に映る自分の姿が見えた。


母さん譲りの白い肌、カフェオレのような色をした髪と瞳。


本当かどうか知らないけど、私のひいおばあちゃんはロシア人だとか。


正直そんなのどうでもいい。


いつの頃からか、大嫌いになっていた。



あまりにも母親に似過ぎた、自分のこの容姿を。 
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