キミさえいれば
私のスマホの待ち受けは、大好きなたもっちゃんだ。


荷物の中に一枚だけ奇跡的に入っていたたもっちゃんの写真をスマホのカメラで撮って、ずっと待ち受けにしている私。


まさかそれを黒崎先輩に見られてしまうなんて……。


「ねぇ、マジで誰なの? この子」


先輩は必死だ。


もうここまで来たら、正直に言うしかないよね……。


「その人、私の兄なんです」


「兄?」


「私が12歳の時に、両親が離婚したんです。

兄は父が引き取って、私は母が引き取ったんですけど、それ以来父と兄には一度も会えてなくて。

どこに住んでるのかも、わからないんです……」


そう言うと先輩の目が、ひどく悲しそうな目に変わった。


「私の兄、1つ歳上で名前が(たもつ)っていうんです。

兄と年齢も名前も一致するし、何よりも面影があったので。

だから私、先輩の事を」


「そうか……。

だから初めて会った時、俺の事をたもっちゃんって呼んだんだ……」


私は、コクンと頷いた。


「まさか本当に俺に似た人がいたなんて。

しかも同じ名前で……。

それなのに俺。

もしかして白石が俺の気を引こうとしてるんじゃないかって疑ってたんだ。

すげー恥ずかしいよ。

ごめんな……」


そう言って先輩が申し訳なさそうに眉を曲げるから、私は首を横に降った。
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