キミさえいれば
「私、黒崎先輩が兄じゃないってわかって、すごく悲しかったんです」


ようやくたもっちゃんに会えたと思ったのに。


「そうなんだ……。

白石は、お兄さんが大好きなんだな」


「はい、大切な兄です。

すごく優しくて、いつも私を守ってくれてました。

会いたくてたまりません……」


「白石……」


あ、まずい。


泣きそう。


「なんか、ちょっとだけ残念だな」


そう言って、小さなため息をつく先輩。


「お兄さんだと思ったから、初めて会った時、俺に声をかけたんだよな?

確かにあの時は戸惑ったけど、実は内心ちょっと嬉しかったんだ。

まぁ、優越感って言うかさ」


「優越感?」


「白石みたいな可愛い子に興味を持たれたら、男は悪い気しないよ」


初めて先輩に可愛いって言われて、顔が熱くなっていく。


多分真っ赤になってるはずだけど、夜だからバレてないよね?


「あの、さ」


「はい?」


「良かったら、なってあげようか?」


「え、何にですか?」


私の問いかけに、なぜか黙り込む先輩。


しばらくすると、静かに口を開いた。


「白石のお兄さんに……」
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