キミさえいれば
そうして迎えた文化祭当日。


私達生徒会は朝から大忙しだった。


ちなみに私と黒崎先輩は仕事の持ち場が違うから、朝に会って以来、顔を合わす事はなかった。


体育館のステージでは吹奏楽部、軽音部、演劇部の発表が行われ、かなりの盛り上がりを見せていた。


各クラスの出し物も、それぞれ趣向をこらしていて面白そうだった。


10月から1ヶ月以上ずっと準備して来た文化祭は始まってしまえばあっと言う間で、最後のプログラムを残すのみとなっていた。


各クラスから、出し物で使った紙類、パンフレットなどがグランドの中央に設置された蒔組みに集められていく。


この最後のプログラムは自由参加で、帰りたい人は帰っても良いのだそうだ。


私は役員だから、帰れないけれど……。


万一の時のための消火器を持って、スタンバイをする。


待機しながらキョロキョロと辺りを見てみたけど、黒崎先輩の姿はどこにも見当たらなかった。



しばらくすると、中央に集められた紙の山に火が点火された。


その火は次第に燃え上がり、薄暗いグランドを優しく照らしていく。


その炎が綺麗でつい目を奪われていたら、グランドに音楽が響き始めた。


どこからともなくカップルが1組、2組と集まって来て、気がつけば沢山のカップルが火を囲んで踊り始めていた。


恥ずかしそうに手を繋いで踊るカップル、抱きしめ合って揺れるカップルと、実にさまざまで見ていて面白い。


思わずクスッと笑った時だった。


「白石さん」


誰かに声をかけられた。
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