キミさえいれば
やっぱりそうだ。


先輩は、綾香さんとやり直すつもりなんだ……!


「い、いいですよ、先輩。

だって先輩は、本当のお兄ちゃんじゃないんですし。

い、今までありがとうございました。

家まで送ってもらったり。

い、色々と気にかけてくださって」


どうしよう。


声が震えてしまう。


「白石?」


そう言って、私の顔を覗き込む先輩。


私は咄嗟に下を向いた。


「せ、先輩は……。

綾香さんと、よりを戻すんですよね?」


だからもう私とは、最後にしたいって言ってるんだ。


「えっ? 

なんで白石が綾香の事を知ってるの?」


はっ、いけない。


私ってば、なんで綾香さんの名前を出しちゃったんだろう。


あえて言うことじゃなかったのに。


「じ、実はあの……、この前偶然見たんです。

せ、先輩と綾香さんが、生徒会室で二人でいるところ……」


私の言葉に目を見開く先輩。


「話……、聞いてたの?」


「あ、えと……」


どうしよう。


話を盗み聞きするような子なんだと思われるかな。


「もしかして……、見た?

アイツが俺にしたこと」


先輩の問いにギュッと目を閉じると、私はそのままゆっくりと頷いた。


「ごめんなさい。

見るつもりはなかったんですけど……」


でも、結果的に見てしまった。


だって……。


どうしても気になったから……。


でも見なければ良かったと、今はひどく後悔している。
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