キミさえいれば
「白石さん」


「白石さん」


「次も、白石さん」


さっきから何度も呼ばれる私の名前。


嫌な予感がして、背中にゾクッと冷たいものが走った。


「全部で25票。

ウチのクラスの代表は、白石さんに決定しましたー。

拍手ー」


パチパチパチと、まだらに聞こえるやる気のない拍手。


生徒会役員の候補者がいなくて、やむなく投票をすることになったのだけど。


どうやらハメられてしまったらしい。


クラスのリーダー格の女子に目を向けると、私を見ながらクスッと笑っていた。


思考を閉じてしまえれば、どれだけ楽だろう。


考えること、感じることが麻痺してしまえば、苦しむことも悲しむこともないのに。


まだ2年以上も残っている高校生活があまりにも長く思えて、気が遠くなってしまった9月のある日のホームルームだった。
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