キミさえいれば
流れていた音楽が、優しくスローな音楽に変わる。


だけどそれとは逆に、私の心臓はどんどん速度を上げていく。 

 
「兄貴としてじゃなくて。

俺を男として見て欲しい」


やだ、どうして?


なんでこんなにドキドキするの?


「俺、白石が好きだ……」


そう言って先輩が、私の背中に回した腕に力を込めた。


「俺と付き合って欲しい。

ダメかな……?」


そんな……。

 
ダメだなんて…。


「せ、んぱい。あの……」


どうしよう。


胸が一杯で言葉にならない。

 
先輩が私の顔を見ようと、首を傾ける。


私はすぅっと息を吸った。


「私……。せ、先輩の、そばにいたいです……っ」


言った途端、ぶわっと涙が溢れて来た。


そうだ。


私、綾香さんに嫉妬してた。


綾香さんとヨリなんか戻して欲しくなかった。


この気持ちは、兄に対する思いとは明らかに違う。

 
この思いは……。


「私も……。

先輩が……好きです……」

 
言った言葉と共に、身体中から思いが溢れてくる。


この感情は、間違いなく恋なんだ……!
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