キミさえいれば
「いらっしゃいませ」


ピッピッと、慣れた手つきでバーコードリーダーに商品を通していく。


青い制服を身にまとい、学校帰りにほぼ毎日勤務するのは、隣町の目立たない場所にひっそりと建つコンビニ。


バイト禁止の学校なだけに、場所には細心の注意を払った。


母親ですら私がバイトをしていることを知らない。


母さんは私が部活動をしていると思っていて、まさか娘が隠れてバイト代をせっせと貯金しているなんて思ってもいないだろう。


私がここまでしてお金を貯めるのは、ある目的のため。


少しずつ増えていく預金残高だけが、私の生き甲斐だ。


だけどその数日後、その希望すら削がれてしまう事件が起こってしまった。


そう。

 
落選してしまえば良かったのに、私は生徒会役員に当選してしまったのだ。


生徒会になんて入ったらバイトをする時間が減るし、ましてや生徒会役員がアルバイトなんてしている事がバレたら、何を言われるかわからない。


あぁ……。


どこまで行っても、やっぱり私は不運な女なのかもしれない。
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