キミさえいれば
「そんな……っ。


私は先輩のこと……!」


先輩のことがこんなに大好きなのに。


どうして……?


「凛、笑わないで聞いてくれる?」


私は先輩の腕の中でコクンと頷いた。


「お前のスマホ。

待ち受けが、ずっと兄貴だろう?

どうして俺にしてくれないのかなって……。

凛が俺を好きなのは、兄貴に似てるからであって。

俺は結局、お前の兄貴を越えられないのかなって……。

そう思うと自信なくて」


「先輩……」


「俺、お前の兄貴に嫉妬してたんだ……」


うそ。


そうだったんだ。


先輩はあの待ち受けが気になってたんだ……。


「せ、先輩。

あの、聞いてください。

私……、先輩の写真を持ってないんですけど……」


「は?」


「えと、あの……だから。

待ち受けにしたくても、先輩の画像がないんです……」


私を抱きしめていた腕を緩めて、私の顔を覗き込む先輩。


先輩は、驚いたように目を丸くさせていた。


「え……? たったそれだけの理由?」


私は「はい」と頷いた。


「なんだ、そうだったんだ。

うわー、俺恥ずかしっ。

すげーバカじゃん。

それだけのことなら、早く話せば良かった。

凛も凛だよ。

不安なら、すぐに言ってくれればいいのに」


「先輩……」
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