キミさえいれば
私の名前を呼んだかと思うと、先輩は立ち上がり、すかさず私を抱きしめて。


いつの間にか、唇が重なっていた。


あまりに突然で、私は目が開いたままだ。


ぎこちなく押し当てられていた唇が、次第に優しい感触に変わって。


私はゆっくりと目を閉じた。


私をしっかりと抱きしめたまま、私に唇を重ねる先輩。


私……、今先輩とキスしてるんだ……。


キスってこんな感覚なんだね。


胸はすごくドキドキするのに、頭はボーッとするから不思議。


先輩は何度も角度を変えて、優しいキスをくれる。


あぁ……、先輩が好き。


ずっと、こうしたかったけど。


想像以上に幸せな気持ち……。

 
しばらく優しいキスを交わして、私達はゆっくりと唇を離した。


すると、すぐに先輩が私を強く抱きしめてくれた。


「凛……」


耳元で優しく囁く先輩。


「俺、すげぇ嬉しい」


私も……。


すごく嬉しい……。


「凛。これからは、気になることはすぐに話し合おう。

あと、スマホの写真。

晴れた日にでも撮ろうな」


「はい……」


吹く風が心地良い初夏。


こうして私と先輩は、初めてのキスをした。
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