キミさえいれば
夏の夜に
先輩と幸せな日々を送っていた私だったけど。


夏休みに入った途端、忙しい先輩とは会えなくなってしまって、寂しい日々が続いた。


勉強の合間に送られて来るメッセージと、寝る前の通話が何よりの楽しみだった。


私は夏休みの宿題とバイトを繰り返す毎日で、つまらないと言えばつまらなかった。


だけど、忙しくしている方が先輩に会えない寂しさが紛れて良いと思った。


そんな夏休みも過ぎてみればあっと言う間で、残すところあと一週間となった頃。


私はバイトのシフトが通常通り夕方に戻る事になった。


それを先輩に伝えると、合気道の練習の後一緒に帰ろうということになって、私はその日のバイトをウキウキしながらこなした。


そうして迎えた21時。


バイトが終わった私は店長に挨拶をしてお店を出た。


自転車を手押ししながら、コンビニの裏の通りに入った時だった。


いきなり誰かに腕をガシッと掴まれた。


ビックリして後ろを振り返ると、中肉中背の男性が私の腕をしっかり握りしめていた。


「な、に……?」 


20代くらいだろうか?


目付きがすごく鋭い。

 
怖くなって腕を離そうとすると、その人が急に私の腕をぐいっと引っ張って、無理矢理歩き始めた。


そのせいで自転車がガチャンと倒れて、私のカバンがカゴから飛び出してしまった。


「い、いや……っ。離して!」


怖い……!


一体どこへ行こうとしているの?
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