アメ、ときどきチョコレート
「おっはよー。あれ、ミワどうしたの。なんか変な顔してるよ」



「え、そお?」



 芽衣はわたしに話しかけながらスカートのポケットの中を探る。



「ほら」



 ひょいっとわたしに何かを投げてよこした。



「おわわわわ」



 うっかり取りそこねたものを見ると、なんとそれはチューインガムだった。



「ミワは、甘いモノが不足すると元気がなくなるでしょ?」



「え?あ、そうだね、ありがと」



 本当は甘いモノが不足していたわけではないのだけれど(あさからしっかり砂糖のまぶされたコーンフレークも食べてきたし)、せっかくのもらいものなので大事に食べよう。



 実は、わたしの双子の片割れだという坂本について考えていたのだった。

 すぐにはその言葉の意味がわからなくて、思わず「双子の片割れ?」と聞いたところで予鈴が鳴ったのだった。


 わたしには父親がいない。母と二人暮らしだ。母さんはわたしの父親については何も言わなかったが、なんとなく何も聞いてはいけない空気があった。だから、わたしはわたしの父親について何も知らない。



「それでは出席を取るぞー。朝倉美和。朝倉?朝倉いるかー?」


「ミワ、呼ばれてるよ」

「あっ、はい」


 わたしがあわてて返事をすると、大島先生は


「おーい朝倉、好きな男のことを考えてるんじゃないだろうな」


 と茶化すように言った。


「そんなわけないじゃないですか!」


 みんながゲラゲラ笑っている。……笑われてしまった。



 そして休み時間。



「おい、お前好きな奴いないよな」



 ……早速坂本に捕まえられた。








 

























 




 
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