アメ、ときどきチョコレート
 芽衣は、きゅっと口を結んで、口角を上げて、いつものスマイルを作った。


「ミワなら……ミワならきっと、大丈夫だよ」


「芽衣!」


 芽衣は、もうどこかに行ってしまった。



 ………最悪だ。



「美和!」


 和哉が後ろから追いかけてくる。でも、ごめん。今は待つことはできない。



 思いっきり、B組のドアを開ける。俊一のいるクラスのドア。


 ガララララララ!!


 すごい音がしたけど、気にしない。



「高宮俊一!!どこにいる!」



 放課後も教室に残っていた生徒の何人かが、わたしの怒声にビクッとする。怒声なのかって?そう、わたしは今、怒っている!!


「高宮くんなら、野球部の部室に……」


 それを聞いた途端、わたしはは走りだした。どこにって?野球部の部室にだ!!


 さすがにドアを開ける訳にはいかないから、野球部のドアの前で、大声で叫ぶ。


『俊一!!朝倉だ!今すぐ出てこい!!」


 もう言葉遣いがめちゃくちゃだけど、許してほしい。


「朝倉!どうしたんだよ!?」


 出てきた俊一の顔をわたしは思いっきり叩いてやった。


「このバカ俊一!!なんでたかが喧嘩ぐらいで浮気するんだよ!お前、芽衣の気持ち、痛いほど知ってるだろうが!!」


 俊一は、思った通り、唖然としている。



「朝倉?どうしたんだよ!?」



「芽衣と一緒にいてやれよ!!なんでお前は離れちゃうんだよ!!」


 わたしはそう言いながら、何か熱いものが頬を伝っているのを感じた。涙だ、とわかるまでに、時間がかかった。




 
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