君の生きた証~love in war~
校門を出る。

パトリシアが、眩しい日差しに目を細めた。



しばらくぶりの外。

しばらくぶりの自分の部屋。



銃の跡が残り、血痕もあるが、それ以外は、平穏を感じさせるままだ。




いつも通りの部屋。



ロルフの机と背中合わせになるように置かれた机。

その横の本棚。

読書は嫌いじゃないから、それなりの量の本が置いてある。

ロルフは、本じゃなくて煙草や酒を隠すように使ってたけど。



教科書。

ノート。

制服。

時計。


勉強道具や日用品を、静かにカバンの中に詰めていく。




机の引き出しを開ける。



たいしたものは入っていない。



故郷の家族からの手紙。

美術部のナターシャが描いてくれた俺の似顔絵。

ショパンのレコード。



・・・俺は、ショパンが好きだった。

でも、ナタリーは、クララ・シューマンが好きで。

あぁ、モーツァルトも嫌いじゃないと言っていた。







・・・考えるな。

もう、考えたくない。

もう、覚えていたくない。

忘れたい。

なかったことにしたい。


・・・でも。

< 543 / 552 >

この作品をシェア

pagetop