ハート交換
「何だよー。」


肩の力が一気に抜けて階段の踊り場に座り込んでしまった。


「晃、安心した?晃がこんなに動揺するなんて珍しい―!あの子のことが好きなの?」


修は、変わらずのんびりとした声で俺に話しかける。


その落ち着きが俺を余計にイライラさせる。

「ちげーよ。アイツは・・・・俺はアイツに大切なものを預けているんだよ!!!そんなんじゃないからな。」

「大切なものって、何を彼女に預けているの?」


本当のことを話したってきっと修一は、信じてくれない。心の声が聞こえるのはあの子と俺の二人だけなのだから。


「とにかく!!体の傷は治るけど心の傷は一生治らない。それだよ、だからだよ。」


俺が動揺しているのは単にあの子の体の中に俺の心があるからだ。

俺の心を傷つけられたら困るだけさ。



俺は一方的に携帯を切って走り出した。


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