アイツと私の世間事情
午後の部は基本的には遥香が独占していたと言っても過言ではないと思う。

「おーい、パスパス!」

遥香が手に取ったシュートは吸い込まれるようにしてゴールをくぐっていった。

「いぇーい!」

これで女子の部で14勝0敗の完全優勝である。

「遥香、あんたまじで最高!」

「本当本当!遥香無しだったら駄目だったよー…」

次々と人が集まってゆく様を私は遠くからうずうずと眺めていた。

こういう時は下手に動くと巻き込まれてしまう恐れがあるからだ。
…わかってはいるけど、遥香を褒めたい!頭撫で撫でしたい!

謎の衝動に駆られながら私はじっと我慢していた。

ようやく解放された遥香がこちらへ走ってきた。

「いやー、参った参った頭撫で回されてぐしゃぐしゃになっちゃったよ」

やれやれ、という顔をしている遥香を見てもう居ても立ってもいられなくなった私は遥香に飛び付いた。

「うわっ、葵まで何すんのー!」

「おーよしよし、よくやったぞー!」

私よりも身長が低い遥香はたまにものすごく撫で回したくなる何かを持っている。

「もー、男子の試合見に行くんでしょ?」

遥香に言われようやくハッとしてばたばたと男子のバスケットボールを見に行った。
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