アイツと私の世間事情
「きゃぁぁぁぁぁぁあ!中島くぅぅぅぅぅぅぅん!」

「もはや悲鳴だよね、これ」

半ば呆れながら私が言った。

「私もそう思う」

コートの中で中島がシュートを決める度、ただでさえ煩い歓声は大きくなる。

…いや、凄いけどやり過ぎじゃない!?

耳を塞ぎそうになる衝動を抑えながら、チラリと中島を見る。

…まあ、かっこいいっちゃいいけどさ。

するとその思いが通じてしまったのか、中島本人と目がパッチリと合ってしまった。

そして何故か中島は私の方を指差し、ウインクをした。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

その瞬間耳が潰れるかと思うほどの歓声が辺りを包みこんだ。

「見た!?あれきっと私にウインクしてくれたのよ!」

「何言ってんの!?私に決まってるでしょ!?」

私の周りに居た可愛い女の子達が騒ぎだす。

一瞬私の事を指差してるのかと思った…

ばくばくと鳴っている心臓を抑えながら、勘違いした自分が少し恥ずかしくなった。

「わぁー、凄いね中島君」

隣に居た遥香がコッソリと私に耳打ちした。

「ほ、本当だよねー。誰にウインクしたんだろ?」

考え事をしていた時にいきなり話しかけられたため、少しドキッとしながら私は
遥香に喋った。

すると遥香は、はあ?と言いたげな顔をしていきなりブツブツと呟き始めた。

「いやいや、普通あそこまでやられたら解るでしょうが…中学の頃から仲良いけど、ここまで鈍感だとは…」

なおもブツブツと呟いている遥香に少し眉をあげて聞いた。

「なんて?声が小さくて聞こえないんだけど…」

すると、遥香は慌てたように

「い、いや何でもないの!こっちの話!」

私は変な遥香、と呟いてからコートに目を向けた。
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