アイツと私の世間事情
「ねー、1組の中島君ってかっこよくない?」

なあんだ、中島の事かと思いつつこっそりと聞き耳をたてる。

「あー、わかるわかる。さっきのシュートとか凄くかっこよかったもんねー!」

「しかも超イケメンだし!!」

いい加減、もう良い時間だし帰ろう、と思い歩きだそうとしたその時、

「そういえば、中島君って好きな人とか居るのかな?」

その言葉では私はビシッという効果音と共に固まってしまった。

…いや、興味がある訳じゃないよ!?ちょっと謎の力によって動けないだけで、決して聞きたいとかではなくて…

心の中で誰にという訳でもなく言い訳をしながらこっそりと聞き耳を立てる。

「そう言えば聞いた事ないよね」

「でも、好きな人ぐらい居るでしょー」

「いやいや、もしかしたら女子に興味がないのかもしれないよ?」

やだーとくすくす笑いながらつつき合う数人の女子。

…やっぱ知らないんだ、ちょっと残念なような嬉しいような。
とりあえず、帰ろ。

そこでほっとして気を抜いてしまったのか、近くにあった空き缶を思いっきり踏んでしまった。

「!?…誰か居るの?」

「や、やだ止めてよ怖いじゃん…」

「と、とりあえず見に行こうよ…」

数人の足音が近づいてくる。

よし、逃げよう。

どうか気づかないで…そう願いながら、家に向かって一目散に走っていった。
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