アイツと私の世間事情

第二章

「え、葵どうしちゃったの？」

怪訝そうな顔をした遥香が私を見ながら言った。

そんな顔をするのも無理は無い。私の今の格好は休み時間であるにもかかわらず、教科書片手に勉強の鬼のごとく勉強をしているのである。

「百歩譲って試験一週間前ならわかるけど、今試験3週間前よ？」

一体何があったのよ、と遥香は続けた。

「普通のテストならここまでやんないわよ…」

はぁぁぁぁと大きな溜息をつきながら、私は言った。

「え、なんかあったの？」

遥香がこてり、と首を傾げた。

「それがね…」

私はこの前の中島との経緯を遥香に事細かに話した。

廊下で数人の女子の話を立ち聞きした事、むしゃくしゃして大声で叫んだ事、それを中島本人に聞かれてしまった事…


最初はうんうんと頷いていた遥香もだんだん呆れた表情になっていった。

「てか、中島の成績じゃ到底葵に勝てないんじゃない？そんな心配しなくても…」

「甘いっっ！」

私はバシーンと机を思いっきり叩きながら叫んだ。

「あの中島よ！？何も考えずに承諾なんてする訳ないでしょーが！」

「いやいや、あんたの中で中島はどんな人物なのよ」

「魔王か悪魔の生まれ変わり」

私は素早く答えた。

「うわぁ…てか、そこまで言う！？」

「遥香は中島の小学校の時の事あんま知らないからそう言えるのよ…」

思い出しただけでぐったりしながら、私ら答えた。

「そ、そんなに凄いの？中島君」

少し興味深そうに遥香が言った。

「…聞きたい？」

私は遥香をちらりと見て言った。

遥香は返事をする代わりにこくこくと頷いた。
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