アイツと私の世間事情

あれは、たしか小学校5年の頃。

元々、私と中島の仲は悪く無かった。
でも、あの頃の私達は色々と難しくて、お互いに距離が出てきた時期だった。

小学5年だった中島は今とは違って冷徹で、無愛想だった。

…唯一変わってないところは嫌味なほどモテてた事ぐらい。

中島は冷徹な性格もあってか、色々と喧嘩をふっかけられていた。まあ、全てスルーしていたけど。

…だけど、一回だけ中島が喧嘩をした事があった。

「はあ？お前には関係無いだろ？」

「いーや、関係あるね」

いつも冷静だった中島がその時だけは、その大きな瞳に怒りをにじませていた。

「へーぇ、どう関係あるんだ？教えてくれよ」

ニヤニヤと笑いながら相手の男子が中島に突っかかっていた。

いつもは静かな中島が喧嘩をしていると知ってわらわらと人が集まっていた。

「お前の言葉を聞いていると虫唾がはしるんだよ、そんな事もわかんない訳？」

中島がハッと鼻で笑いながら言った。その言葉にカアアアと相手の男子の顔が赤くなっていった。

「なっ、何だよ！？お前俺より馬鹿なくせに！」

「は？俺がお前より馬鹿だって？何寝ぼけた事言ってんの？」

少し眉を上げながら中島は言った。

「馬鹿は馬鹿だろ？ばーかばーか」

「じゃあ、勝負しようぜ」

きゅ、と口の端を上げて中島が余裕そうに言った。

「勝負ぅ？」

「そ、次の算数のテストで勝った方が相手に謝る、これでどうた」

「はぁ？お前それマジでいってんの？ 」

馬鹿にしたように相手の男子が言った。

そう言うのも頷ける。相手の男子は毎回大体90点を取るほど頭が良かった。
それに比べて中島は平均ちょっと上ぐらい。

もう結果は見えていると言っていい。

「それとも、負けるのが怖い訳？」

この言葉に相手の男子は切れたらしい。

「面白い、受けて立ってやる」

額に青筋を浮かべながら相手の男子が言った。

誰もが中島の負けを確信した時、勝負は意外な展開になった。