プロテクト・ストーリー?



―スーツを着て、ネクタイを絞めた。



今日も一日が始まる。



―でも、今日からはいつもとは異なる。



海が家で待っている。



―そう思うと、
今日も仕事、頑張ろう。とか、
仕事をさっさと終わらせて、
早く帰って来よう。とか、
帰った時の海に会える楽しみを糧に、
頑張ろう。とか、
柄にないことを考えている、俺。



―なんて、考えながらカバンを持って、
部屋から出た。



行く前に、もう一度、海の顔を見てから
家を出ようかと思ったが、
きっと離れたくなると思ったから、
そのまま海に会うことなく、
玄関に向かった。



―が。



「アレ?もう行くの?」



海は出て行こうとしている俺に気付き、
近付いてきた。



「うん、行ってくるね?」



「いってらっしゃい。」



俺が海に声をかければ、
彼女は笑顔で返してくれる。



―そんな、可愛い彼女を見て、
意地悪したくなった。



「なー、海?」



「んー?何ー?」



「いってらっしゃいのキスして?」



「……………は?」



―さすがに、
フザケ過ぎていると思うが、
止まらない…。止まれない…。



「ねー、して?キス。
してくれたら、俺、一日頑張れる。」



「フザケてないで、
早く仕事………っ………。」



―海の腕を掴んで、引き寄せ、



ちゅ。



―唇にキスを落とした。



「行ってきます。」



“俺から逃げないで
ちゃんと留守番してるんだよ?”




―海の耳元で囁いてから家を出た。



それに遅れて海の奇声が
聞こえてきたのは言うまでもない…。(笑)



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