プロテクト・ストーリー?
「俺だけどさー、」
「誰だよ。」
「拓だよ。
表示見てから、電話出ろよ。」
「………。
…んで、何だよ?呼び出し?」
「違う違う。
あのさー、明日なんだけど、
どうしても外せない用とか、入ってる?」
「いや?」
「じゃぁさ、悪いんだけど、
明日の夜勤、代わってくんない?」
「何で?」
―どうしても外せないって言えば、
嘘になるけど、大切な用事があるんだ。
海に勉強を教えるっていう、大切な用事がね。
だから、極力、
代わりたくないというのが本音なんだが…。
「俺のばーちゃんがさ、
大分、危篤で明日か明後日か…、
…くらいなんだよね。
かなり、お世話になった人だから、
最期はちゃんと看取りたいなって…。」
「いいよ。
代わってやるよ。」
「マジでー?サンキュー。
またなんか奢るー。」
「はいはい。」
「…あのさ、ひょっとして、
お取り込み中だった?」
―拓に図星を突かれ、ドクンと鼓動が跳ねた。
「急に何、言い出すんだよ。」
―そんなに、俺、わかりやすい…?
「別にー。
ちょっとからかっただけー。
サンキューねー。またねー。」
「………。」
切りやがったアノヤロウ。
邪魔だけしやがって…。
―そう思うと同時に心底安堵した。
拓があのタイミングで、
電話をかけてくれていなかったら、
きっと、俺は海を襲ってた…。
そう思うと、自分自身の制御のできなささに
恐怖を覚えた。