「1つだけ、嘘をついたんだ」
1つの嘘と一生の証
呆気なく、その日は来た。
だけど、私の前方にいる背を向けた永人は、全てを諦めたように黙っていた。
ずっと永遠にそばにいてくれるから、永人って名前にしたんだよ、と胸倉を掴みそうになった。
だけど、そんなこと出来なかった。
優しく笑う永人の面影を、今は一つも感じられなくて、悲しそうに下を向いていた。
しばらくして、永人は「璃羽、ごめんね」と呟き、私の頭をそっと撫でた。
そんな永人を見るのは嫌で、冷たい手を強く握り、その場を離れた。
永人は私と一緒にいたくないの?という、答えが分かり切った問いかけに、ただただ「ごめんね」と言うだけだった。
永人は悪くないよ。
悪いのは・・・・・・身勝手なのは、全部人間なの。
ごめんね。
永人が1番悔しいよね。
なのに、何で私こんな酷いこと聞くんだろう。
私も永人も、ずっと一緒だと思ってたのに。
だから、あなたを永人って名付けたのに。
『物語に不死身の登場人物なんていないんだよ。
だって、みんないつかは消えちゃうんだから。
そんなおかしな役が存在したら、
誰だって気味悪くて、共感なんて出来ないよ』
いつかのあなたが、悲しそうに呟いたのを思い出した。
あの時、永人がどんな気持ちでそんなこと言ったんだろう。
この日が来る事を、どこかで予測してたのかな?
永人は頭がいいから、本当にそうかもしれないね。