「1つだけ、嘘をついたんだ」

「永人の手、いつも冷たいのに」

ぼそっと呟いた。


「それね、設定で出来るんだよ」


驚きの発言に、私は間抜けな声を出してしまう。


「だって、璃羽が言ったんだよ?
手の温かい人は、心の冷たい人だって。
僕、基本は電化製品だから、
温かいのが普通なんだけど、頑張ったんだ」


おしゃべりな過去の自分が恥ずかしくなる。


「可愛かったなー璃羽。
あのねあのね、って興奮して。
まだ、五歳だったからね」


「いいなあ、永人。
私との記憶、全部覚えてるの?」


小学校に入るまでは、四六時中永人といた。

あの時間が一番楽しかった。

でも、詳しく実際は覚えてないんだけど。



「うん。
でも、教えなーい」


「え~。
永人の意地悪ー」


「これは、僕だけの、
僕と璃羽の思い出だから」


「じゃあ、出演料貰わなきゃ」


すると、ちゅっと唇が触れた。


「はい、出演料」


にこっと微笑む永人は、美しかった。



そんな笑顔を見て、また涙が出そうになる。


もう、永人の前では泣かない。

ぎゅっと歯を食い縛って、涙を止める。


そんな私を見て、永人は両手で私の両頬に触れた。


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