「1つだけ、嘘をついたんだ」
「幸せになって。
それで、いい家庭を築いてよ。
今日のこと、
忘れないでほしい。
でも、これを最後にしないで。
僕は、大丈夫だから。
これでも、嫉妬はしない方だし」


また、優しく笑う永人。


その笑顔を見るのが、大好きだったの。



「・・・・・・永人、私も1つだけ嘘をついたの」


「え?」


「私、紅茶大好きよ。
でもね、もっと好きだったのは、
そんな紅茶を淹れている時の、
永人の真剣な顔が好きだったの」


きっと、それが見たくて、毎日紅茶淹れてもらってたんだ。




・・・・・・永人。


あなたは、もうすぐ消えちゃうよ。


私の隣で、いつも優しく笑ってくれなくなる。


だけど、永人との日々は忘れない。


今日のことも、絶対に忘れないよ。




あなたの私のための冷たい手も、


私のために勉強してくれた紅茶も、


私に向けられる優しい笑顔も、



私についた優しい1つの嘘も・・・・・・


全てが愛しかった。




さよならは言わないよ。


だけど、「愛してる」って言ってもいい?


別れがつらくなるかもしれないけど、

言ってもいいかな?


それまでは、私の中だけで、何度も呟くわ。


愛してる。




誰よりも、何よりも、



あなたを愛してる






――END――
< 12 / 13 >

この作品をシェア

pagetop