「1つだけ、嘘をついたんだ」
永人はロボットだった。
学習能力を持ち、人間とほぼ同じ感情をプログラムされ、人に販売された第1ロボットだった。
出会ったのは、かれこれ13年前で、私が4歳のとき。
当たり前だけど、永人の姿はあの頃から一つとして変わっていない。
会った当初は、年の離れた兄弟のようだったのに、今では同級生に見える。
そんな風に、永人だけはずっとそのままで、私だけが年を取り、いつしかおばあちゃんになっても、二人で一緒に居られると思っていた。
なのに、どうして・・・・・・?
どこで何を間違えた?
何で永人が消えなくちゃならないの?
「最近、またロボットが増えたね」
電機会社から家に帰る道中で、永人は言った。
確かに、最近またロボットを見かけるのがどっと増えた。
「そうだね。
だって、あれからもう13年も経ったんだもん」
「僕ももう、本当に古い方になっちゃったんだなあ」
冗談っぽく永人は笑った。
私を笑わせようとしているのは分かるけど、今最も禁句な冗談だった。
「新しいロボットなんて、いらないよ。
永人がいてくれれば・・・・・・私はもう何もいらないのに」
さっきの電機会社の人の言葉が、何度も自分の中でこだまする。
「第1ロボは不安定でね」と。
たったひと言で言いきった。
そして続けて、もう充電方法も異なりますから新機種に買い変えたらどうでしょう、と永人の前で勧めてきた。
涙が出そうだった。
世間から見たら、家電製品を一つ買い変えるのと同じことなのかもしれないよ?
だけど、私にとって永人は・・・・・・本当に大切な人なの。