「1つだけ、嘘をついたんだ」
「ねえ、しよっか」


そんなこと言えるほど、度胸があるわけじゃない。

だけど、強がっていないと、今にも永人の前で涙を流してしまいそうだった。


「なに、言ってるの?」


「お願い・・・・・・。
永人の証を残して。
一生、忘れないから」


永人の細い体を、強く抱き締めた。

だけど、永人は私を抱きよせてはくれない。


「それは、ロボットの僕には無理だよ」


「今さら、何よ。
それに取扱説明書見たけど、できるって書いてあったよ。
そんなに、私が・・・・・・嫌なの?」


黙る永人がもどかしくて、続けた。


「私は永人が好きだよ。
だけど、永人は絶対に私に好きだって言ってくれなかったよね?
私、本当は永人に嫌われてたのかな?」


不安だった。

どんなに私が「好きだよ」って言っても、永人はそれに一度も返事をしてくれることはなかった。


お互い好き合っていたことくらい、分かってた。

でも、そこには明確な言葉もなかった。


どこか一方的だったんだ。


「嫌いなわけないよ。
僕はずっと、璃羽だけだった。
ただ・・・・・・いつか離れていく璃羽を見るのが嫌だった」


私以上に、永人は強く抱き締めた。



「怖かったんだ。
永人なんて結局ロボットじゃない。
不死身なんて気色悪い。
そんなこと言われたら、どうしようって」



永人の声は震えていた。

涙を堪えている声だって、すぐに分かった。





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