【短編】恋しちゃダメですかっ?
前からずっと不思議に思っていたことを、ことねは初めて言葉にだす。
「どうして、わたしなの?わたしにしか見えないし、どうして、わたしのところにくるの?」
『う〜ん、君を登校途中に見かけて、楽しそうに笑っていて、君なら、僕を助けてくれそうな気がしたから、かな?』
「わたしが…?」
『君は多分気付いてないよ。』
『僕は小さい頃から身体が弱くて、君の学校の近くにある、病院に通っていた。入院したことだって、あるんだけどね。
僕の病室から、君の姿をいつも見ていたんだ。』
「わたしを前から知っていたの?」
『そうだよ、それで、僕が、いなくなる前の日に、家に帰る、車の中で、楽しそうに笑ってる君を見かけた。』
小太郎は悲しげな表情で、ことねを見つめる。
でも、ことねには、まだ白くうっすら、人間の形をした、もやがみえるだけ。
『僕は心臓がわるかったんだ。
でも、またこうして君に逢えてよかった。』
そんなこと急に言われても、とまどってしまう。
だって、あなたの姿だって、見えないのに。
「ねぇ、小太郎くん、あなたには、わたしが、はっきり見えるの?」
『姿も、声も、何もかも、最後に僕がみたまんまだよ。』