彼が幸せであるように
第一章
 
  
 
『で、あるから―』
  

教室に先生の声が響く。
その声を聞きながら、私は窓の外を見つめていた。
 
 
窓から見える桜は、本当に綺麗だ。
 
 
中島雪音
この春、晴れて大学生になった。
 

授業が終わり、友人の芽衣と食堂に向かっていた。
 
「今日も授業つかれたー」
 
「90分はつらいよね」
 
 
食堂はざわざわとにぎわっている。
 
 
私はカレー、芽衣はラーメンを注文し席につく。
正直おいしいと言えない食堂のご飯はもう慣れつつもある。
 
「そういえばさー、聞いた?」
 
「なにが?」
 
「この大学の王子サマの話」
 
大学の、王子、サマ?
物語に出てくるような王子様を想像して、少しむせた。
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