彼が幸せであるように
「今は、芽衣だけなの」
「芽衣って?」
そういえば、二人って会ったことないかも。
「私の友達。高校で仲良くなったの」
「へえ…名字は?」
「んーと、清水、清水芽衣だよ」
――スッと、結城くんの雰囲気が変わった。
それまで穏やかだったのが、重たい空気になった。
息が、詰まる。
「…結城、くん?」
声を絞り出して話しかけると、
結城くんはニコッと笑った。
「ごめん、なんでもない」
「私なんかした?」
「違うよ、ごめんね。なんでもないから」
―だからそれ以上何も聞かないで?
なんていいそうな口ぶり。
「…わかった」
そんなふうに言われたら、何も聞けないよ。