彼が幸せであるように


それだけ、
ただそれだけなのに
さっきまであった震えが止まった。
 

差し出された手を握ると、引っ張られ、
そのまま結城くんの腕の中にスッポリとおさまった。 
  
  
すぅっと息を吸って、深呼吸する。
変なの。
結城くんも男なのに。
 
なんで、この人だけ、大丈夫なんだろう。
 

「雪音は男が駄目なの?」
 
「…うん」

そう答えると、
ぎゅっと私を抱きしめながら、結城くんが言った。
 

「俺も男なのに」
  
 
ほんとにそう。
なんで、大丈夫なんだろう。
 
なんで、彼だけは―――。
 
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