彼が幸せであるように
さいとうゆうき。
その名前を出した途端、
母はぴたりと動きを止めた。
「どこで、その名前を…」
「え…、大学にそういう名前の人がいて」
「そう…でも、あのユウキくんだったら
こっちに戻ってきてるはずないし…人違いね」
『あのユウキくん』って、誰…?
「それって、誰のこと?」
「…知らなくていいの。
雪音には関係ないことだからね」
それ以上、私が何かを聞くことはなかった。
――過去の私に、一体何があったのだろう。