彼が幸せであるように
母のように、
その名前を聞いて芽衣は動きを止めた。
カレーをすくっていたスプーンがカタンと床に落ちる。
「…芽衣?」
「まさか」
まさか、なに?
私が知らないことを、母も、芽衣も知っている。
「…ねえ、結城くんって、何かあるの?」
そういうと、芽衣がハッとしてスプーンを拾い上げた。
「…詳しい事はいえない」
どういう事?
思考回路がショートする。
「あのね、雪音が悩んでる男嫌い、あれには原因があるの」
「原因…?」
自意識過剰、と笑い飛ばしていたのに。
今の芽衣はとても真剣な顔をしていて、
目を逸らす事ができなかった。