彼が幸せであるように
 
 
 
――そこには。
ハニーブラウンの
ふわふわと揺れる髪に
モデルなんか目じゃない顔立ちの男が立っていた。
 
その男は、貼り付けたような笑顔を浮かべている。
 
――王子サマ
芽衣が言っていたあの話をふと思い出した。
…この人だ、間違いない。
  

「……っ」
 
 
いつもなら、ゾッとするのに。
近くに男がいるだけで吐きそうになるのに。
 
 
 
ドクドク、と、心臓の音が聞こえて、
顔が真っ赤になっていく。
 
こんなの、はじめて――。
 
 
  
「…中島さん?」
 
「えっ」
 
 
ぽーっと見つめていると、
その男が私の名前を呼んだ。
 
…なんで、私の名前、知ってるの?
 
 
 
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