彼が幸せであるように
 
 
 
「俺のこと覚えてない?
小4の時クラスメートだった、斉藤結城だよ」
 
「さいとう、ゆうき…?」
  

覚えてない、覚えてるはずがない。
私の反応を見て、彼は寂しそうに言った。
 
 
「覚えてないか」
 
「…ごめんなさい」
 
「いやいや、気にしないで」
 
 
 
覚えてるはずがないのだ。
 

……私には、空白の四年間がある。
 
小学校に入学してから、小学4年生までの記憶が、
ゴッソリと抜けている。
 
 
理由はわからない。
母からは、『頭を強く打った』
としか聞かされていない。
 
その時の記憶がなくても、特に不便なことがなかった。
だから思い出そうともしなかった。
 

けど
 
私、この人を知っているの――?
 
 
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