彼が幸せであるように
 
 
「ねえ、中島さん。
ここじゃうるさいから、移動して話さない?」
 
「でも授業が」
 
「いいじゃん、さぼっちゃお?」
 
 
でも、と口を開くと
私の腕を引っ張って彼は歩き出した。
 

…触られても、鳥肌がたたない。
いつもなら鳥肌がたって、吐き気までするのに。
 
少し歩くと中庭についた。
ベンチに座ると彼がニコッと笑いかけてきた。
 

 
「あの、斉藤くん」
 
「結城でいいよ」
 
「…結城くん。覚えてなくてごめんね」
 

そういうと、結城くんは少しだけ目を曇らせた。
  
 
「まあ、しょうがないよね。思い出してほしいけど」
 
…また、貼り付けたような笑顔。
 
 
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