そばにいたこと
君との出会い
僕が君に出会ったのは、本当にありふれた、ドラマにもならないような場所だった。
入学式――
桜並木の下で、君を見付けた。
ほっそりした背中が、迷ったように行ったり来たり。
いや、迷ったように、じゃなくて本当に君は迷っていたんだ。
そして、意を決して踏み出した方向は、学校とは反対側だった。
「ねえ、君。」
声を掛けると、びくっと立ち止まった彼女が振り返った。
そして、僕の姿を瞳に映すなり、驚いたように目を見開いた。
肩の上くらいで切りそろえられた、真っ直ぐな黒髪が印象的だった。
「桐生高校だろ?そっちじゃないよ、こっち。」
道を指差すと、彼女は嬉しそうに笑った。
「ありがとう。」
透き通るような声だった。
僕は、どぎまぎしてしまって、それ以上君に話しかけることはできなかったね。
じゃ、なんて不愛想に言いながら、片手を上げて君に背を向けた。
だけどあの時、僕はすでに、君に恋していたのだと思う。
後ろを歩く君の視線を感じる背中が、熱くて仕方がなかったのだから。
こんなありふれた恋の始まり。
君と出会ったのは、桜並木の下だった――
入学式――
桜並木の下で、君を見付けた。
ほっそりした背中が、迷ったように行ったり来たり。
いや、迷ったように、じゃなくて本当に君は迷っていたんだ。
そして、意を決して踏み出した方向は、学校とは反対側だった。
「ねえ、君。」
声を掛けると、びくっと立ち止まった彼女が振り返った。
そして、僕の姿を瞳に映すなり、驚いたように目を見開いた。
肩の上くらいで切りそろえられた、真っ直ぐな黒髪が印象的だった。
「桐生高校だろ?そっちじゃないよ、こっち。」
道を指差すと、彼女は嬉しそうに笑った。
「ありがとう。」
透き通るような声だった。
僕は、どぎまぎしてしまって、それ以上君に話しかけることはできなかったね。
じゃ、なんて不愛想に言いながら、片手を上げて君に背を向けた。
だけどあの時、僕はすでに、君に恋していたのだと思う。
後ろを歩く君の視線を感じる背中が、熱くて仕方がなかったのだから。
こんなありふれた恋の始まり。
君と出会ったのは、桜並木の下だった――