そばにいたこと
序盤は順調すぎる内容だった。

完全な守備。
そして、僕のストレート。

決勝にも関わらず、試合はあっけなく進んでいった。


そして、2点リードして迎えた7回表。





これが、僕にとっての運命の分かれ道だった。






ふたつストライクを取った。
もうひとつというところだったんだ。






僕はボールを投げる瞬間、肩に違和感を感じた。






痛み、ではなかった。
なんだか、不思議な感覚に陥って。

球は少し横にずれて、判定はボールになった。

ここでやめていたら、僕にも望みは残されていたのだろう。





でも、その時の僕は、気のせいだ、と思い込むことにしたのだ。

度重なる練習の疲れに重ねて、ずっと投げてきた決勝の7回表。
疲れが出ないわけはない。

だけど、まだ早すぎる。
8回、9回を残しているのだ。


次の球は、少し上に逸れた。
スピードも明らかに落ちている。

気付けば打者は、ボールをバットで捉えて、小気味よく打ち返していた。


ファンファーレが響く。
それは、その夏、僕が初めて許したヒットだった――
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