嫌魔
十五歳
ふう、しゃべりすぎて、少し疲れたな。
じゃあ、次は、あの集団のことを話さないとな。
おれが高校生になった年の、七月のことだ。
夕方、学校から帰る途中に、公園のそばで、おれはまた出会ってしまった。
誰にって?膜に包まれた人間にだよ。
しかも今度は二人だ。
そいつらは、おれが通りかかるのを待っていた様子だった。
三十歳くらいの、やせたスーツを着た男と、黒い服とスカートをはいた、五十歳くらいの化粧の濃い女だった。二人とも、膜に包まれていた。
おれは、ぼうぜんとしながら立ち止まった。あまりにも突然だったからね。思わず、はあ?って声をあげてしまったよ。
膜に包まれたそいつらは、なれなれしい笑みを浮かべながら、おれの前に歩み寄ってきた。なんか、気味が悪かった。
「君も、嫌魔にとりつかれたんだね」
男がやさしく話しかけてきた。
「やま?」
おれが首をかしげると、女が答えた。
「あなたの体を包んでいる、それのことよ。それは嫌魔といってね、妖怪なの。それにとりつかれた人間は、すべてのひとに嫌われる」
はじめて膜の名前を知ったおれは、あらためて自分を包む膜、いや、嫌魔をじっと見た。