嫌魔
畳の上には、便器にこびりついた糞のように、すさまじく汚らしい血溜まりが広がっていた。
死に方は、ひとりひとりちがっているようだった。
全身にあざがある者。
首にしめられたあとがあり、目を剥いている者。
喉に釘が刺さっている者。
肩から胸にかけて、長い切り傷が残っている者。
一目で確認できたのは、それだけだ。あとはよくわからない。急激な吐き気がこみあげて、口をおさえて下を向いていたからな。
さっきおれを殺そうとした親父の表情と、目の前に転がる死体達の表情が、頭の中で複雑にまざりあい、脳が熱くなった。
中崎は苦笑した。
「君も仲間になりにきたんだろ?でも、おそいよ。みんな死んでしまった」
「・・・・・・いったい、何が?」
おれはなんとか口をひらいた。舌の根が緊張で渇いていた。
「何が起きたんだと思う?」
ぼんやりとした口調で聞き返された。
「わかるわけないだろう、こんなの」そこで少しえずいたあと、中崎を見た。「まさかこれ、あんたがやったのか?」
「んん、やったといえば、やったのかな。この中の何人かは、ぼくが殺したからね」
おれは、一歩あとずさった。
「・・・・・・どういうことだ?」
中崎は、死体の方を向いた。
「彼等は神様のもとへ旅立ったんだ」