嫌魔
翌日の朝、おれは両親と目をあわさないようにして、素早く朝食をとった。
そして、制服に着替え、外に出て、いつも通りの時間に来た幼稚園の送迎バスに乗った。
車内で席に座ったおれを見て、先生や園児達はなぜか急にだまりこんだ。昨日いっしょにサッカーをしていた友達が、不自然に目をそらした。
幼稚園に着くと、おれはその三人の友達に話しかけた。するとそいつらは、昨日のように、悲鳴をあげながら逃げだした。
あわてて追いかけて、三人の中で一番足がおそいやつをつかまえた。そいつは必死で暴れながら叫んだ。
「はなせ。はなせよ」
「なんで逃げるんだよ?」
「はなしてよ。はなして」
「答えろ」
「わからないよ。昨日もそうだったんだけど、おまえがそばに来ると、なんだかすごく嫌な気分になるんだ」
その声があまりにも苦しそうだったので、思わず手をはなすと、そいつはおれをつきとばして、園舎の方に走り去っていった。
昨晩の両親と同じようなことを友達に言われて、おれは困惑した。
ふとまわりを見ると、他の園児達に無言で見つめられていた。
半透明な膜越しに見える彼らの表情は、激しい嫌悪にゆがんでいた。