今日、君が結婚します
アウトレットはクリスマスだから人で溢れかえっていた。迷子にならないようにとしっかりと握られた手。



10年前には考えられなかった距離感。



あのときも気持ちは通じ合っていたのに、素直に優しさを受け止められなかった。



声を掛けてくれたときも、一緒に帰った帰り道も、修学旅行も、文化祭の前日も帰りまで待ってくれたことも、お好み焼きをご馳走してくれたことも全部大和くんは私を思って行動してくれていた。



もっと早く気がつきたかった。




結局卒業式にも話せなくて帰ってからもずっと部屋に篭って泣き続けた。一言だけでも話しかければよかった。



「ありがとう」



それだけでよかった。それなのに、ただ彼の姿を目で追うだけで話しかけることなんてできなかった。



高校に入ってからも駅が同じだから会えないかなと思って彼の姿を探したけれど時間が合わずに会えなかった。
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