彼が虚勢をはる理由
「ちょっと、そこの二人」
夏野君達が、互いに突っかかっているポーズのまま、私の方を見る。
これはこれで、新手のコメディみたいで面白い。
「朝早くから何を理由に喧嘩してるんだか知らないけど、コレ仕舞うのに邪魔なんだけど」
右手に持った学校指定のジャージを、二人の前に突き出す。
「だってコイツが、星崎を…」
「それ、言っちゃっても良いの?」
何かを言い掛けた夏野君に、ニヤリと笑う相手。
咄嗟に、夏野君は口を閉じる。
何? 私のコトで、何かあったの?
…嫌な予感しかしない。
しかし嫌な予感を感じてるだけじゃ何もならないので、私は少し冷や汗をかきながら、それを分からせないように続ける。
「…コイツが、私を?」
「……英語の出来ない、お子ちゃまだって。星崎がお子ちゃまだから、日野には彼氏ができて、星崎には彼氏ができないんだって」
夏野君が言いにくそうに、苦々しく吐き出す。
…しかし、私にはそんな事はどうでも良かった。
「……は? 何それ?」
私があっけにとられているのを見て、言い争っていた二人も拍子抜けした。
「そんなの、どうでも良いじゃん。私の英語の成績が酷いのは皆知ってる事だし、それとこれとは関係無いし」
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