彼が虚勢をはる理由





私の席は、夏野君の席からだと、後ろを振り向くような形で見る事になる。
普通に前を向くだけじゃ見られないわけだから、不自然な事極まりない。各教科の先生方も疑問に思うだろう。


「そんなに後ろ向いてたの? 授業中とか、怒られてなかった?」

「それが、夏野は上手いんだよ。先生が黒板に書いてたりして、こっち見てない時に振り向いてたんだよね。いやぁ~、あれは上手かったなぁ。…あ、でも少しは怒られてたかも」


思い出し笑いなのか、クスクスと笑うハル。
ハルにとっては面白いかもしれないけど、事情がちっとも掴めない私にとっては、あまり面白くない。


「昨日の夏野は、そんな感じで変だったんだよ。それが今朝の騒ぎにどう繋がったかは、全く分かんないけど」

「はぁ…」


細かい事は詳しくは分かんないけど。
恐らく、昨日の様子をからかわれた夏野君が、カッとなって掴みかかったとか、そんな感じな気がする。
しかし、普段の夏野君なら、そんな事じゃ逆ギレしたりしないと思うんだけどなぁ。


「…何してんだか」

「確かに。朝から元気だねぇ」


私の溜め息に、ハルが面白そうに突っ込んだ。
…いや、そういう事じゃないんだけど。





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