彼が虚勢をはる理由





これは、直接揉めてた夏野君に聞いてみない限りには、事情は分かりそうにない気がする。
ハルの話じゃ埒があかないし、教室内を見回してみても、未だに舞子は登校してきてないみたいだし。
それと同時に、事情を聞こうとしても、夏野君も教室内に戻ってきてないみたいだし。

チャイムが鳴って教室に担任が入ってくるのと同時に、もう一つの戸の方から、夏野君がスルリと入ってきて、そのまま何事も無かったように席に座っていた。
けど、舞子はまだ来ていない。


「お、珍しい。……えっと、欠席は太田だけだね」


担任が教室中を見回して、少し夏野君に目を留めてから、確認するかのように呟いた。
担任が珍しいと言ったのは"夏野君が遅刻してない事"だろうけど、私に言わせれば、舞子が休みだっていう事の方が珍しい。
舞子、休みか…。具合でも悪いのかな? 後でメールしてみよう。
ふと顔を上げると、舞子についてハルも同じ事を考えていたのか、こっちを向いているハルと目が合った。
それと同時に、何故かこっちを見ていた夏野君とも目が合った。夏野君には、すぐに目を逸らされてしまった。

HRが終わると、ハルが私の席の所に来た。





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