彼が虚勢をはる理由
「舞子、休むの珍しいよね~。ハル、何か知ってる?」
私がハルを見上げてそう聞くと、ハルは首を横に振った。
「あら。…ってか、ハルさっき私のコト見てたよね? あれ何で?」
私の質問に、ハルは再び首を横に振った。
「違うよ。香苗を見てたんじゃなくて、夏野を見てたんだ」
「…夏野君を? 何で?」
「夏野が、また香苗の方を見ていたからだよ。わざわざ後ろを向いて」
……そういえば、ハルと目が合った後に、夏野君とも目が合ったんだった。
すぐに逸らされたけど。
夏野君に、私の方を向いてた理由を聞こうとしたけど、夏野君はまた教室に居なかった。
……何なんだ。やっぱ避けられてる?
「やっぱ夏野、香苗のコトが好きなんじゃないのー? そんなにガン見してきてるんだし」
「…いや、私自身は避けられてるとしか思えないんだけど」
「……そんなに避けられてんの?」
「避けられてるよ」
そのまま一時間目の世界史の授業が始まる直前に夏野君は戻ってきたけど、すぐに授業は始まってしまったので、私は夏野君に今朝の揉め事の詳細も、昨日から私の席の方をわざわざ後ろを振り返ってみているらしい理由についても、聞く事は出来なかった。
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