彼が虚勢をはる理由
出来過ぎた話に、何だかモヤモヤを抱える私。
そして、ハル曰く“昨日は何度も後ろを振り返っていた”らしい夏野君だけど、今日は今のところ全く振り返ってきてはいなかった。
こういうトラブルの後こそ、後ろを振り返ってきて欲しい。
揉めてる最中に、ザックリと揉めてる原因は聞いたけど、あの説明だけじゃよく分からないよ。
少しずつ、ゆっくりでも良いから、夏野君の言葉で、ちゃんと揉めてた理由を説明して欲しいんだ。
私は鞄から小さなメモ帳を取り出して、“朝の喧嘩の原因を、詳しく説明して!”と書いて、クシャクシャと丸めて、夏野君の背中目がけて投げた。
古典的な方法だけど、夏野君の連絡先すら知らなかった私には、この方法しかない。
丸めたメモは無事に夏野君の背中に集中して、夏野君が足下に転がったメモを拾い上げる。
そのまま中を確認して、後ろを向いてきた夏野君に対して、私は机を軽く叩いて合図してみた。
……確かに、確かに夏野君と目が合った。
しかし夏野君は机を叩く私を見た後、何事も無かったかのように、そのまま前を向いて、授業に戻っていった。
…シカトした!? 何て事なの。
確かに授業中だけど、合図くらいは、してくれても良いじゃん…。
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