彼が虚勢をはる理由
でもそれすらも、単純に"好き"か"嫌い"かの確率として考えるなら、その否定の悲しみの可能性すらも半分は確率があるわけで。
しかも、単純に好きか嫌いかだけじゃ決められなくて、将来や進路の事とか、人によっては家柄の都合とか、周りを取り巻く環境の事とかも考えると、もはや否定される可能性の方が大きい気までしてくる。
……そこまで考えていると、誰かを好きになったりとか、想ったりとか、とても悲しい行動のような気がしてきた。
――どうして人間は、生き物は、誰かを好きにならずにはいられないの?
それはもはや傷の原因であり、痛みであり、弱みにすらなりそうだ。きっとヒリヒリして、なかなか立ち直れない。
……それでも人は、私は、誰かを好きにならずにいられないし、想いを伝えずにはいられない。
「気を付け、礼」
日直の号令の声が聞こえて、私はハッと我に返った。
教室の前の時計を確認すると、ちょうど授業が終わる時間で、号令が終わったクラスは急激にガヤガヤとうるさくなってくる。
時計を確認する姿勢のまま途方に暮れる私の視界の端に、休み時間になったからか、こちらを振り返る夏野君の金髪が映っていた。
右耳に連なっているピアスがチャラチャラと揺れていた。
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