彼が虚勢をはる理由





「星崎、どうしたの?」


――気付いたら、クラスの全員が立ち上がっていて、その全員の目が私に注がれていた。
どうやら、HRは終盤にさしかかっていて、残るは帰りの挨拶だけみたいだ。

近くをキョロキョロと見回すと、夏野君の呆気に取られた顔と、ハルの心配そうにこちらを見る顔が見えて、私も慌てて立ち上がる。
そのまま再度、号令はかけられて、HRは無事に終わった。
その後の教室掃除の為に、急いで机を教室の後ろに下げ始めるクラスメート達の中で、私はボーッとしてしまう。

夏野君に聞きたい事も、伝えたい事も沢山ありすぎて、何をどのように話せば良いのかが分かんない。
しかし、前に座っている人から急かされて、私は何とか机を下げた。
そのまま夏野君の姿を探すと、夏野君は今日の掃除当番だったらしく、箒で床を掃いていた。


「ちょっと香苗、大丈夫なの?」


掃除当番ではない私が、そのまま掃除を続ける夏野君を眺めていると、ハルが後ろから肩を叩いてきて、そのまま廊下まで引っ張っていかれた。
確かに教室の真ん中に突っ立っているのは、掃き掃除の邪魔だけど。教室の後ろ半分の掃き掃除をする時に机を全部移動させるけど、その時にも邪魔になってしまう。





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